IPsecをTransport-modeで使用し、端末(SEIL)間の通信を保護する手順を説明します。
IPsecのトランスポートモードは本来1対1の端末同士の通信を保護するモードですが、
L2TPv3やIP-IPトンネルといった通信内容の保護機能を持たないVPN機能と併用することで、
ネットワーク間の通信の安全性を高めるために応用することができます。
注: IP-IPトンネル+IPsecトランスポートモードの組み合わせについては、
ルーティングベースIPsec(IPsecインタフェース)を使用するVPN設定がより簡便です。対向装置の実装状況により使い分けてください。
ここでは、次のような構成のネットワークを前提に説明します。
表 1. ネットワーク情報ローカル側
項目 |
値 |
備考 |
接続IPアドレス |
10.0.1.1 |
VPNの始点となるIPアドレス |
表 2. ネットワーク情報リモート側
項目 |
値 |
備考 |
接続IPアドレス |
10.0.2.1 |
VPNの終点となるIPアドレス |
- VPN装置となるSEILはいずれもIPアドレスが固定で割り当てられているものとします。
- 互いの接続IPアドレスへの疎通が取れる状態であれば、WAN側ネットワークへの接続方式は問いません(インターネット接続である必要はありません)。
IKEプロポーザル・IPsec-SAプロポーザルの設定
- 設定パラメータを用意する
表 3. 暗号パラメータの例
項目 |
値 |
備考 |
IKE:暗号アルゴリズム(encryption) |
AES(aes) |
|
IKE:ハッシュアルゴリズム(hash) |
SHA-1(sha1) |
|
IKE:DHグループ(dh-group) |
1024ビットMODP DHグループ(modp1024) |
|
IKE:ライフタイム(lifetime-of-time) |
12時間(12h) |
|
IPsec:暗号アルゴリズム(encryption-algorithm) |
AES(aes) |
|
IPsec:認証アルゴリズム(authentication-algorithm) |
HMAC-SHA1(hmac-sha1) |
|
IPsec:PFSグループ(pfs-group) |
1024ビットMODP DHグループ(modp1024) |
|
IPsec:ライフタイム(lifetime-of-time) |
6時間(6h) |
|
- IKEプロポーザルの設定
# ike proposal add IKEP01 encryption aes hash sha1
authentication preshared-key dh-group modp1024 lifetime-of-time 12h
#
- VPNを構成する各SEILに共通のパラメータを設定します。
- IPsec-SAプロポーザルの設定
# ipsec security-association proposal add SAP01 pfs-group modp1024
authentication-algorithm hmac-sha1 encryption-algorithm aes lifetime-of-time 6h
#
- VPNを構成する各SEILに共通のパラメータを設定します。
IKE事前共有鍵・IKEピアの設定
- 設定パラメータを用意する
表 4. 用意する設定パラメータの例
項目 |
値 |
備考 |
始点IPアドレス |
10.0.1.1 |
設定対象(ローカル側)の接続IPアドレス |
終点IPアドレス |
10.0.2.1 |
対向装置(リモート側)の接続IPアドレス |
事前共有鍵(preshared-key) |
opensesame |
任意文字列 |
IKE:鍵交換モード(exchange-mode) |
main |
メインモード |
使用するIKEプロポーザル |
IKEP01 |
設定済みの識別子 |
- IKE事前共有鍵の設定
# ike preshared-key add "10.0.2.1" "opensesame"
#
- IKE事前共有鍵は、対向同士で共通の文字列を指定します。
また、鍵交換モードにメインモードを使用するため、事前共有鍵の識別子は、対向装置のIPアドレスを使用します。
注:
- 対向装置を設定する際はIPアドレスを読み替えてください。
- IKEピアの設定
# ike peer add PEER01 address 10.0.2.1 exchange-mode main proposals IKEP01
my-identifier address peers-identifier address initial-contact enable
# ike auto-initiation enable
#
- メインモードでは、相互のIPアドレスを識別に使用します。
- initial-contact、及び auto-initiation を有効(enable)にすることにより、再起動後などの再折衝が円滑になります。
注:
- 対向装置を設定する際はIPアドレスを読み替えてください。
IPsec-SA・IPsec-SPの設定
- 設定パラメータを用意する
表 5. 用意する設定パラメータの例
項目 |
値 |
備考 |
始点IPアドレス |
10.0.1.1 |
設定対象(ローカル側)の接続IPアドレス |
終点IPアドレス |
10.0.2.1 |
対向装置(リモート側)の接続IPアドレス |
使用するプロトコル |
ESP |
|
使用するIPsec-SAプロポーザル |
SAP01 |
設定済みの識別子 |
- IPsecセキュリティアソシエーションを設定する
# ipsec security-association add SA01 transport 10.0.1.1 10.0.2.1 ike SAP01 esp enable
#
注:
- 対向装置を設定する際はIPアドレスを読み替えてください。
- IPsecセキュリティポリシーを設定する
# ipsec security-policy add SP01 security-association SA01 src 10.0.1.1/32 dst 10.0.2.1/32
#
- トランスポートモードでは、VPN装置同士の通信のみ暗号化対象とします。
注:
- 対向装置を設定する際はネットワークアドレスを読み替えてください。
以上で設定は終了です。
- IPsec接続は自動的に開始し、SEIL間(相互のグローバルアドレス間)の通信は暗号化により保護されます。また、それに伴い
SEIL間でのトンネリングプロトコル(L2TPv3やIP-IP)による通信の内容も保護されます。