レスキューファームウェア

本装置の内蔵フラッシュROM内のファームウェアデータが破損した場合の自動復旧機能について説明します。

機能概要

本装置のシステムは、起動時に内蔵フラッシュROM内のファームウェアイメージからメインメモリに展開されてオンメモリで動作します。

ファームウェアバージョンを更新する際はフラッシュROMの書き換えが行われますが、更新処理中の電源断等によってフラッシュROM内のデータが不完全な状態になると、システムを起動することができなくなります。

このようなとき、本装置はフラッシュROM内の「レスキュー領域」に格納されているバックアップからシステムを起動し、通常起動用のファームウェアデータの復旧を自動的に試みます。

動作条件

対応機種
SA-W2, SA-W2L
IPLバージョン
1.20以上
ファームウェアバージョン(レスキュー領域)
3.70以上
動作環境
正常な稼働状況においてファームウェア更新が可能であること
ヒント:

ファームウェアの復旧は、通常のファームウェアの更新処理と同様に、モジュールサーバからのダウンロードとフラッシュROMへの書き込みによって成されます。このため通常の起動時と同様に、インターネット回線に接続され、ファームウェア更新が可能なコンフィグがSMFサービスに保存されている必要があります。機器単体での復旧はできません。

仕組みと制約

復旧にあたって特別な操作は必要なく、通常の利用時と同様にインターネット回線に接続された状態で電源が投入されたとき、起動用ファームウェアの破損を検知すると自動的に復旧を試みます。

このとき、本装置は次のように動作します。
  1. 一時的にレスキュー領域のファームウェアを起動する
  2. 正常時のファームウェア更新と同様にユーザコンフィグを取得し、設定されているバージョンのファームウェアイメージをダウンロードする
  3. ダウンロードしたファームウェアイメージを、フラッシュROM内の通常起動用ファームウェアの領域に書き込む
  4. 再起動する
  5. 通常通りの起動処理に移行する

ファームウェアの復旧時に使用する「レスキュー領域」に格納されているファームウェアは通常のリリースファームウェアと同じものですが、自動的な復旧処理にのみ使用されます。

工場出荷時は通常起動用・レスキュー用共に最新バージョンが格納されますが、定常的な運用時は通常起動用のファームウェアのみが運用管理担当者によって更新されるため、レスキュー領域のファームウェアは古いバージョンのままになる場合があります。格納領域間でのバージョンの同期は行われません。

このため、システム起動時のコンフィグ自動取得に必要な新しい機能が、レスキュー領域のファームウェアバージョンには備わっていないケースが発生し得ます。これは例えば新しいUSBモバイルデータ通信端末のサポート機能等が該当し、古いバージョンのレスキューファームウェアではデバイスを認識できず復旧用ファームウェアをダウンロードできない、といった問題を起こす可能性があります。

このような場合は、一時的に他の(古いバージョンで接続可能な)回線やコンフィグを用意することで復旧作業が可能ですが、後述する手順で予めレスキュー領域のファームウェアを更新しておくことでも対処できます。

バージョン情報の確認

起動や復旧に関わるシステムソフトウェアの各バージョンは、それぞれ次の手段で確認できます。
IPLバージョン(IPL Monitor version)
"show system" または "show tech-support"
通常起動用ファームウェアのバージョン
"show system" または "show tech-support"
レスキュー領域のファームウェアバージョン
"show tech-support"

"show tech-support" は "show system" の内容を含み、次のように表示されます。

1. "show tech-support"コマンド
----------[system]----------
SA-W2 IPL Monitor version 1.20 ・・・(1)
SA-W2 Ver. 5.34 (Release)  ・・・・(2)

H/Wrev  :  A
CPU     : Cortex-A9 r4p1 (Cortex core)
Serial  : SAW2-SAX###000272
DistID  : 0001-0000-0000-0013-02E0-4DFF-FE35-0EE0
Country : jp
~略~
----------[rescue firmware]----------
4.60 (Release) ・・・(3)
~略~
(1) SA-W2 IPL Monitor version 1.20
システム起動に使用したIPLのバージョンです。ver.1.20以上であれば自動復旧機能が動作します。
(2) SA-W2 Ver. 5.34 (Release)
起動時にフラッシュROMの通常領域から読み込み、現在稼働しているシステムのファームウェアバージョンです。
(3) 4.60 (Release)
レスキュー領域に格納されているファームウェアのバージョンです。

レスキュー領域のファームウェアの更新

レスキュー領域のファームウェアは、次の手順で更新できます。これは機器の初期化操作と同じです。
  1. 装置前面の初期化スイッチ("SW"とプリントされている)を押しながら電源を投入する

初期化を伴う通常のファームウェアによるシステム起動時は、レスキュー領域のファームウェアもユーザコンフィグの指定バージョンに従って更新されます。