消費電力の節減が要請されている今夏、情報通信機器の節電対策を実施されている企業が増えていることと思います。そこで前回のWake on LANの記事に続き、今回は、SEIL/Xシリーズの消費電力と節電ポイントについてまとめます。
SEIL/Xシリーズの仕様には、以下のように書かれています。
製品名 | SEIL/X1 | SEIL/X2 |
---|---|---|
型番 | AD-9010J | AD-9030J |
皮相電力 / 消費電力 | 40VA/16W | 30VA/30W |
情報機器の消費電力は、カタログ等を見ることで確認することができます。SEIL/X1の場合は、16Wです。しかしながらカタログスペックの場合は最大値のみを記述していることが多いため、実際に何ワットの電力を消費しているのかを知ることは難しいです。
そこで、今回は市販のワットチェッカーを用いて消費電力の傾向と省エネ対策を検討していきます。
今回は、SEIL/X1 をワットチェッカーに繋いで消費電力の測定をしていきます。
ワットチェッカーには、サンワサプライさんが販売されている「TAP-TST7」を使用しました。本製品は電気屋さんで普通に市販されているものです。
測定環境の構成は、以下の図のようになります。
項目 | 内容 |
---|---|
測定対象 | SEIL/X1 |
Firmware Version | 3.31 |
測定方法 | SEIL/X1 3台をOAタップを用いて並列に接続 |
測定条件 | 工場出荷時の設定、IP転送は発生しない |
TAP-TST7 は計測できるワットが1ワット単位なので、計測誤差を減らすために SEIL/X1 を3台並列接続することにしました。
計測結果は、以下の通りです。
構成 | 計測値(W) | 一台当たりの消費電力(W) |
---|---|---|
Ethernet結線無し | 23 | 7.7 |
1000BASE-T(3ポート結線) | 32 | 10.7 |
100BASE-TX Full-Duplex(3ポート結線) | 25 | 8.3 |
10BASE-T Full-Duplex(3ポート結線) | 23 | 7.7 |
計測をした結果、以下のことが分かりました。
パケットの転送量を減らすことが節電対策になるかどうかが気になる人もいるかもしれません。そこで、実際に負荷をかけた状態で消費電力が変化するのかどうか、SEIL/X1 と SEIL/B1 について測定してみました。
機器の構成は、以下の通りです。
機器 | 転送量 | 消費電力 |
---|---|---|
SEIL/X1 | 転送なし(1000BASE-T リンクアップのみ) | 10 |
SEIL/X1 | 1フレーム 768バイト ワイヤレート (1000BASE-T) | 11 |
SEIL/B1 | 転送なし(100BASE-TX リンクアップのみ) | 7 |
SEIL/B1 | 1フレーム 384バイト ワイヤレート (100BASE-TX) | 7 |
この通り、通信量が多くても少なくても、消費電力はほとんど変わらないことが分かりました。
SEIL/X1 を利用すれば、1000BASE-TのEthernetを利用しても10ワット強程度の消費電力であることが分かりました。通信負荷が大きい場合も消費電力の増加もほとんどありません。
また、さらなる消費電力の削減には Ethernet のメディアタイプを 1000BASE-Tから 100BASE-TX に変更することも有効であることが分かりました。もし対向側にあるネットワーク機器がメディアタイプの変更に対応していて100Mbpsの通信速度でも十分な場合は、明示的に メディアタイプを 100BASE-TX に固定することで節電するのも良い方法だと思います。
SEILシリーズの工場出荷時の設定では Ethernetメディアタイプを自動判別(auto negotiation)します。自動判別をせずにメディアタイプを固定するには、以下の設定を入力します。
(lan0 インタフェースを 100BASE-TX Full-Duplex に固定する場合) # interface lan0 media 100baseTX-FDX
Ethernetメディアタイプを変更する際の注意点としましては、対向側の機器がメディアタイプの変更を出来ない場合にSEIL側を固定すると、対向側の機器が Half Duplex になってしまいます。Ethernetメディアタイプを変更する場合は機器構成を十分に確認した上で実施してください。